8月29日 土曜日 快晴
水源探索前夜の、あまりの雨と風の音で夜中に目が覚めました。明日を楽しみにしている皆様の為に頼むから晴れてくれ!!との祈りが通じ、朝日が昇る頃に雨は止んでくれました。これで水源探索が出来るとホッと一安心。
今回のコースは、「平成の名水百選」に選ばれた「元滝」、鳥海山の伏流水が湧き出る「出壺」と奇形ブナの王様「あがりこ大王」がある獅子ガ鼻湿原を散策し、昨年「おくりびと」でアカデミー賞を受賞した滝田監督最新作「釣りキチ三平」の映画ロケ地となった名瀑百選の法体の滝を巡り、天寿酒造の無農薬米田んぼ、酒蔵見学と盛りだくさん。
天寿の仕込み水は如何にすばらしい自然環境から来るのかを体感して頂く内容となっています。
参加人数は17名。少数精鋭、強者揃い?の酒好き!山好き?の集まりとなりました。今年もユニークな人達が多く、中島台に向かうバスは終始笑い声でいっぱいでした。半数が関東からのお客様でしたが、北海道の帯広市からフェリーを利用していらしたお客様もいて、遠くからこのイベントに参加していただき大変嬉しく思いました。また昨年に引き続き、今年も参加されたリピーターの方とも再会でき感激しました。
始めの目的地、元滝・中島台に向かうバスの中では佐藤杜氏が冗談を交えながら、(いや、ほとんどオヤジギャグ)鳥海山の歴史や風土、本日の行程などの説明をしました。プロのガイドが舌を巻くほどの博識ぶりで、地元に住む私ですら、「へえ、なるほど。」と唸る程です。その後の天寿を楽しむ会でも参加者の方から「プロのガイドと思ったら、天寿の杜氏さんだとわかり大変うれしい誤算でした。」と最大級の賛辞が送られていました。杜氏が持参したファイルの厚さと資料につける付箋紙の多さから、 少しでも詳しく、楽しく伝えたいという熱意が伝わって来ました。
バスはにかほ市に無事到着。岩から伏流水がしみ出し、マイナスイオンたっぷりの霧が出ている元滝まで駐車場から徒歩で向かいました。
元滝まで来ると、ひんやりと冷気が体を包みます。深く深呼吸を繰り返したり、水に触れてみたりと楽しそうでした。上流に川の無い滝は、途切れることなく岩の間から伏流水が湧き出て、澄み切った水は平成の名水百選に選ばれる風景にふさわしいものでした。
次なる目的地は中島台・獅子ガ鼻湿原。世界でも大変珍しいコケ類や奇形ブナがあり、トレッキングスポットとして人気の湿原です。奥に進むと鳥海山系の川の源流となる、通称「出壺」と呼ばる湧水スポットがあります。
「出壺」の湧水群は元滝同様、「平成の名水百選」に選ばれており、そこから湧き出る鳥海山の水が、発電を含め里の田畑や人々を潤しています。
道は比較的平らで、あまり起伏はありませんが、木道が昨夜の雨で濡れている個所もあり、足元に気をつけてもくもくと歩きました。「あまり歩くことをしないから、先頭の人についていくのが大変だよ。でも、とても気持ちがいいね」と、笑顔を見せながら歩いている人もいました。 木漏れ日が差し込む森の中を歩くこと40分。コースの中間地点「出壺」に到着しました。こんこんと湧き出る水は透明度が高く、一年通じて7℃程度に温度が保たれています。この所観光客が増え、今年は残念な事に周辺のブナの木の衰弱が激しく、出壺は立ち入り禁止となっていました。 散策して汗をかき、乾いた喉を出壺の水で潤すという毎年の楽しみが出来なかったのは残念でしたが、ブナを守り、環境を守るためですからいたしかたありません。参加者の方には、環境が回復してからのお楽しみということで、納得していただきました。
出壺を抜け、チョウカイマリモ等を観察。マリモのイメージは球体ですが、チョウカイマリモは絨毯のようです。コケの複合体が何層にも重なり、独特の形になりました。ここでしか見られない珍しいコケもあり、みな興味深く観察していました。その後は毎年恒例の冷水我慢大会です。チョウカイマリモを守る冷たーい水に手を入れて、何分我慢できるかを競うものです。これが痛いのなんの・・・(泣)。冷たいを通り越して痛いのです。その荒行で今年は3名の方が3分を越える新記録を出し、同時優勝を果たしました!
その後、三百年を超える樹齢で、奇形ブナの王様「あがりこ大王」に立ち寄り、巨木を鑑賞。獅子ガ鼻湿原は奇形ブナが多く、曲がりくねった変な形のブナが生えています。この奇形ブナが出来た理由の一つに「炭焼き」があるそうです。冬になると雪の上から出た木を切り、そこからまた芽を出し、ブナが成長する。大きくなったところをまた切るといった具合に、人間の生活と自然との共存が、奇形ブナを作り出したのではないかといわれています。
休憩も挟み、2時間強の行程となりましたが、今年は我々水源探索ご一行の後ろに120名!もの団体さんが控えていたので、少し早足だったようです。「いい運動になった」「これでお酒を美味しく飲む準備はOKだ」と笑いながら獅子ヶ鼻湿原をあとにしました。
心地よい汗をかいた後はホテルフォレスタ鳥海自慢の温泉につかり(ぬるぬるした弱アルカリ性の泉質です)、お待ちかね、「天寿を楽しむ会」の始まりです。
弊社社長大井建史が「水源探索を通して、天寿酒蔵のある自然環境を体感していただき、私共酒蔵の人間との交流により、天寿の酒造りにかける『思い』をお伝え出来れば幸いです。」と開会の挨拶をし、乾杯へと移りました。
乾杯のご発声は、昨年も参加された原田ご夫妻にお願いしました。天寿の大吟醸との衝撃的な出会いから、ずーっと天寿ファンだとおっしゃる素敵なご夫妻です。お酒は全国新酒鑑評会銀賞受賞酒。香りをかいでみると、やわらかい吟醸香がします。今日ご参加いただいた皆様だけが飲める受賞酒の酒・・・。いいなあ、うらやましいなあと(担当の仕事上飲めなかったので)真剣に思いました。
楽しく歓談しながら、ずらりと並んだ天寿自慢のお酒をうまいうまいと飲んでいるみなさんを見ていると、私も幸せな気分になりました。
テーブルには合鴨農法の無農薬米美山錦仕込み純吟天寿、食中に最高の天寿酒米研究会産の美山錦100%の純米酒、鳥海高原のジャージー種の高級牛乳から造られたシャンパン風のミルシュ、鳥海山辛口生貯蔵酒が並び、自分にあった吟醸酒を飲み比べて見つけて頂きたいと、飲み比べコーナーには天寿自慢の純米大吟醸、秋田県悲願の酒造好適米秋田酒こまち仕込み大吟醸、天寿ならではの美山錦で仕込んだ大吟醸、昨年海外の賞をトリプル受賞した純米吟醸鳥海山、東京の地酒小売店で好評のPB吟味良香鳥海山の5種類。
宴の中盤、杜氏の持ってきた隠し酒が飲み比べコーナーに並ぶと、みなさん待ってましたとばかりに大盛り上がり。「2番が一番口に合う」「1番が飲みやすくて香り高いね」と、1番から3番までの番号しか振られていない超レアな酒を巡って、みんなで感想を述べ合っていました。この隠し酒が飲めるのは、水源探索イベントの楽しむ会のみですので、リピーターが増えているのもうなずけます。「日本酒好きにはたまらない企画ですね」と褒め言葉をいただき、一日の疲れが吹き飛ぶような気持ちになりました。
楽しい時間はあっという間に過ぎて行き、明日に備えそろそろ中締めの時間です。音頭は天寿の大ファン、イベントがあるたび蔵に駆けつけてくれる頼もしいお姉さん吉見様にお願いしました。利き酒師の免許も持っている日本酒飲みのエキスパートです。
大役を果たしていただきまして、ありがとうございました。
8月30日 日曜日 快晴
2日目の朝も快晴。今日は法体の滝の散策、天寿酒蔵の無農薬田んぼ、蔵見学です。鳥海山の周りには雲がかかっているのに、稜線がはっきり見える不思議な天気でした。実はこの鳥海山、曇天率が高い恥かしがり屋の山なので、「今日は(今日もか?)ついてる!」とツアー一行は盛り上っていました。
9時にホテルを出発し、法体の滝まで約20分。今日も滝は勢いよく流れ落ち、初秋の気配を感じさせるかのように少しだけ木々の緑が薄くなりかけていました。
この滝は「日本の滝百選」に選ばれた名瀑で、新緑や紅葉のシーズンは観光客で大いに賑わいます。昨年の水源探索の時、「おくりびと」でアカデミー賞を受賞した滝田洋二郎監督の最新作、映画「釣りキチ三平」の撮影が行われていました。法体の滝がスクリーンに登場するとあって、地元では炊き出しや様々な支援を行い、撮影を成功させようと盛り上っていました。
つり橋を渡り急な石段を登り到着した展望台から一の滝、二の滝、三の滝からなる雄大な法体の滝を眺めました。
二の滝へご案内しようと、落差57.4メートルの滝の頂上付近を目指しました。
二の滝に到着後、長年の水流で侵食された岩を見て、杜氏より水の持つすさまじいエネルギーについて説明を受けました。自然の作り出した奇観に感動を持って聞き入っているようでした。
滝の散策後は、天寿酒造のアイガモ農法で作る無農薬田んぼに向かいました。「自分たちの手で満足できる米を作り、お酒を醸したいから米作りにこだわっている」と、杜氏自慢の田んぼを前に語っていました。豊かな鳥海山の水の恵みと米作りにかける情熱とが一緒になって、天寿のお酒は出来ていると実感して頂けたでしょうか?
忘れてはいけないのがこの田んぼの主人公、アイガモたちです。無農薬田んぼはアイガモ農法で作られています。 アイガモが水田を駆け回ることによって水草の発生を抑え、雑草除去の農薬を撒かなくても済んでいます。アイガモさんありがとう。11月の「天寿を楽しむ会」で名物アイガモ鍋の具材として、また大活躍してください(笑)。
最後は酒蔵見学です。杜氏が洗瓶、酒詰、麹室、酒母室、もろみ蔵、洗米、蒸し機、精米、船場、のひとつひとつの行程を丁寧にわかりやすく解説しました。なかでも麹の造り方の説明では実際に麹菌を見せ、菌による働きが酒造りにはかかすことのできない重要な要素であるかを熱心に話しました。解りやすい話の内容に「知っているようで、案外知らなかった。目から鱗が落ちたよ。」「なるほど、そういう働きでお酒の酒質が決まるのか。勉強になった。」と口々に感想を漏らしていました。
また精米所では新しく導入した設備や自社精米の利点を詳しく説明し、天寿酒造ではひとつひとつの行程の精度を上げ、常に改良を加え毎年進化しているのだと理解してもらえたようでした。一通り説明が終わったあとは試飲販売で、昨晩の楽しむ会で並んだ酒を販売しました。お気に入りのお酒を見つけて沢山お買い上げ頂いたお客様が多く、大変嬉しかったです。
昼食は国登録有形文化財に指定された矢島町の 「八森苑」で。明治10年頃(大正末期に増築)建てられた木造和風住宅で、主屋が平屋で離れが総2階になっています。元々生駒(矢島)藩の重臣だった佐藤氏が江戸時代の武家屋敷の様式に習い建てたと言われています。その為、当時の武家屋敷の様子を伝えつつ、明治大正期の近代和風的要素もあり、離れの2階などはかなりユニークな意匠も見られます。又、座敷から見た庭も讃岐国(生駒家が矢島に転封される以前の領地)栗林公園を模して作られたといい、風情があり当時の生活を感じる事が出来ます。盛り沢山の楽しい1泊2日の旅はあっという間に過ぎ、帰途に着く時間となりました。
鳥海山の『水』を巡る旅を通して、天寿酒蔵の環境の良さや酒造りにかける「思い」をより深く理解していただけたのではないかなと思っています。
また、来年のご参加心よりお待ちしております。
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